ーAlueシンガポール代表に聞くVol.2ー
進化が求められる人事
ブレンディッドラーニングがもたらす職場での行動変容
~事業の成長に欠かせない人材育成はAIを活用した個別学習へ~

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例年、各企業では様々な研修を企画・運営され、基本的なスキル習得に関するものから、未来のリーダーを育成する次世代リーダー育成を目的としたものまで幅広く行われているものの、そのほとんどが、一定の時間を取ってセミナールームに社員を集め、知識やスキルの講習が行われているのが一般的ではないでしょうか。
研修がきっかけで意識や行動が変わり成長を遂げパフォーマンスを発揮した人もいるものの、こうした従来型の「集合型研修」は一体、どのくらい従業員の行動変容に寄与してきたのか。
目まぐるしく変化する経済環境においては、従業員の行動を変えるという明確な目的に基づいた研修が求められます。特に、変化のスピードが速い、ジョブホッピングもあるアジア地域では、今までのように行動が徐々に変わっていくのを待つような時間的余裕はありません。
そのためには、従来型の集合型研修から脱却し、社員の行動にインパクトを与える新しいブレンディッドラーニングを用いた育成プログラムにより従業員の行動を変容させることが、企業だけでなくシンガポール政府からも求められています。
従来の「集合型で座学」の研修だけではなく、ワークプレイスラーニングを取り入れることでより研修の効果が高まる現代のブレンディッドラーニングとはどのようなものなのか。ここでは、その概念ともたらす従業員への変化(効果)について紹介します。
ブレンディッドラーニングとは
ブレンディッドラーニングとは、その名の通り複数の手法を組み合わせた学習方法です。
そもそもブレンディッドラーニング自体は、広い概念です。
企業研修に限った話ではなく、古くから通信教育として社会には広く浸透していました。
IADによると従来のblended learningは「昔ながらの学習形態(対面式授業)+最新のテクノロジー(スマホ・パソコン・タブレット)を掛け合わせたハイブリッド学習」を意味しています。
今回は、blended learningがどのように生まれたのか、どのようにして今日の形になったのかをみていき、blended learningの歴史を紐解いていく。(以下、eLearning industryのThe History Of Blended Learnigを参照)
・1840’s: First Distance Course
アイサックピットマンが1840年代に初めて郵送で速記用のテキストを学生に送付し学生が入力したものを返送し採点するといった通信教育を行う。
・1960’s & 1970’s: Mainframe Computer-Based Training
60年代・70年代に印刷物や対面での授業からミニコンピュータによるトレーニングに移行した時期であった。これは、組織内の多くの従業員にトレーニングを提供することができた初の出来事であった。
・1970’s to 1980’s: TV-Based Technology to Support Live Training
この時期、企業はビデオネットワークを使って従業員のトレーニングを行い始めた。これによって物理的に従業員を指導する必要がなくなり、トレーニングがよりインタラクティブなものになった。学習者はテレビで講師を見たり、郵送で質問や疑問事項を処理することができた。これは、ウェビナーやビデオ会議の前身であった。
・1980’s & 1990’s: CD-ROM Training and Rise of LMS
この頃になると、学校や組織はよりインタラクティブな学習経験を届けるために、CD-ROMを使い始めた。これはより多くの情報を抱え込むことができたので、通信教育に適していた。eLearningの歴史の中で初めてコンピュータベースのコースは潤沢で包括的な学習経験を提供することができた。いくつかの場面で、これは対面式授業に取って代わられた。
・1998: First Generation Of Web-Based Instruction
この時期になると、コンピュータは単なる富の対象ではなく、大衆に向けてのものになっていた。そして、コンピュータはよりインタラクティブなものを提供し始め、実質的に誰もがインターネット学習のリソースにアクセスできるようになった。
・2000 Until Today: Blended Learning Integration
学習者は現在自分の思い通りに多くのテックツールとアプリケーションを所有している。また、彼らは世界のどこからでもオンライン上のコミュニティとインタラクティブなeLearningのコースに参加することができる。徐々に、対面式での指導とテクノロジーをベースとした学習を統合したblended learningが効果的なものになってきている。
以上見てきたように、Blended Learningは1840年代から徐々に進化を遂げながら現在認知されているものに進化を遂げてきた。こういったBlended Learningの歴史を知ることは、読者の皆様のBlended Learningに対する理解を深めるものとなったのではないだろうか。
(参考URL https://elearningindustry.com/history-of-blended-learning 「The History Of Blended Learning」)
2000年代には、IT技術の発展によってインターネット(テクノロジー)などを利用したブレンディッドラーニングが出てくるようになりました。
これに伴い企業の研修においても、ブレンディッドラーニングの考え方を取り入れた研修が増加し始めました。どこの企業でもeラーニングを取り入れ、従業員の都合に合わせ研修が実施されていると思います。
現状では、多くの企業が「集合型学習(座学)」と「テクノロジーによる個別学習」を組み合わせたブレンディッドラーニングを取り入れています。学習時間の短縮など、効率化を高めるメリットがあるため、広く受け入れられています。
さらに、最近ではスマホを活用したものも出てきており、通勤や移動といった空き時間を利用した研修ができるようにも。テクノロジーの発展に合わせてブレンディッドラーニングも進化を続けています。
新しいブレンディッドラーニング
~従業員の行動を変えるワークプレイスラーニングの必要性~
しかし、時代の変化に応じて、ブレンディッドラーニングも変化しつつあります。新しいブレンディッドラーニングの考え方が出てきました。
この新しいブレンディッドラーニングの概念には、これまでの座学を中心とした集合型研修とテクノロジーによる個別学習に加え「ワークプレイスラーニング(職場内研修)」が入ってきます。従来のブレンディッドラーニングの目的が主に研修の効率化だったのに対し、新しいブレンディッドラーニングの概念では、研修効果を高める(従業員の行動を変えること)ことが目的となっていることに注目したい。
IADによると、シンガポールでのブレンディッドラーニングの定義は「オンライン学習(technology-enabled learning)+対面型学習(Classroom learning)+職場内学習(workplace learning)」である。
まず、ここで出てくる職場内学習(以下workplace learning)とは、職場での様々な経験を通して学習していくのがworkplace learningである。
シンガポールでは職場を主な学びの場にしようとしており、国民に仕事と教育を織り交ぜた質の高い教育システムを提供することを考え、2020年計画で研修会社、講師、企業、参加者を巻き込んでブレンディッドラーニングの浸透を進めているのが特長である。
(参考URL https://www.ial.edu.sg/content/dam/projects/tms/ial/Find-resources/Learning-resource-and-tools/blended-learning-guide/Blended%20classroom%20with%20work%20and%20technology%20(IAL)%201st%20edition%20(1.2).pdf 「IAL BLENDING CLASSROOM WITH WORK AND TECHNOLOGY」)
新しいブレンディッドラーニングでは、「集合型研修+テクノロジー」に「ワークプレイスラーニング」を組み合わせることで、知識やスキルのインプットとアウトプットの両方の実現が期待されている。
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