ーAlueシンガポール代表に聞くVol.2ー
進化が求められる人事
ブレンディッドラーニングがもたらす職場での行動変容
~事業の成長に欠かせない人材育成はAIを活用した個別学習へ~

新しいブレンディッドラーニングの進め方とこれからの課題
ー研修効果を高め、従業員の行動を変えていくためにワークプレイスラーニングを取り入れた新しいブレンディッドラーニングの重要性がわかりました。この新しいブレンディッドラーニングは具体的にどのように進めたら良いのか。
新しいブレンディッドラーニングの進め方は、大きく2つある。
①集合研修+ワークプレイスラーニング
②集合研修+テクノロジー+ワークプレイスラーニング
「①集合研修+ワークプレイスラーニング」の場合は、一定期間に集合型研修を実施し知識のインプットに集中する。そして研修実施後に、理解度を試すテスト行い、出席者全員が100%正答するまで継続。知識の定着を図ります。テスト後、ワークプレイスラーニングを開始します。
ワークプレイスラーニングでは、得た知識をどのように業務に活かすかを示したアクションプランの提出、講師とのフォローコーチングなど、研修での学びをアウトプットできているかを評価します。こうしたワークプレイスラーニングを年に数回繰り返すことで、得た知識が行動化されていきます。
②の場合は、①のプロセスに独自の専用システムを導入し研修を実施します。たとえば、理解度のテストをシステム上で行う、アクションプランを専用のフォーマットでシステム上で提出するなど。独自のシステムを導入する場合には、初期投資がかかるので、多くは①のパターンを選択されるのが一般的です。
このように、集合型研修からワークプレイスラーニングまで、連続的に学習していくことで、事業成長に必要なスキルや知識が定着して、実際の行動に現れるようになります。
ただし、日本で実施されているブレンディッドラーニングにはいくつか改善できるポイントがあると思います。
<課題1:ラーニングの個別化>
日本の現状のブレンディッドラーニングは、一斉研修で集団を対象としたものが大半。個別の課題に応じた取り組みにはなっていません。人によっては、資料の作り方が課題であったり、プレゼンテーションの仕方が課題であったり。抱える課題が一様というわけではありません。
今後は、ブレンディッドラーニングも個別化していくことが求められると思います。
<課題2:職務に応じたカリキュラムの深化>
シンガポールを始めとする海外では、職務・職能が細かく設定されています。特に、シンガポールでは、政府がブレンディッドラーニングも職務・職能に応じて細かく定義しています。
たとえば、プロジェクトマネジメントの場合、「設計」「計画」「アサイン」といった個々の業務過程ごとに学習内容(カリキュラム)が細かく設定されています。また、職能のレベルもスタッフレベルからマネジメントレベルまで細かく分けられています。業務過程と職能のレベルごとに、ブレンディッドラーニングで何を学ぶのかが示されています。
一方、日本ではまだまだシンガポールほど細かなカリキュラムになっていません。そのため、場合によっては、その人にとってあまり適切ではないカリキュラムになってしまうこともあります。人事制度にも関連することですが、今後は、職務や職能をきちんと定義し、それに応じた研修を実現することが望ましいでしょう。
AIを活用し個別のデータに基づいた最適なブレンディッドラーニングの実践へ
ー職務を明確に定義しているとブレンディッドラーニングがさらに効果的になっていくのですね。今後、ブレンディッドラーニングはどのように発展するのでしょう。
冒頭にも述べましたが、目まぐるしく変わっていく経済環境において、事業を成長させるために、個々の従業員の成長は欠かせません。これまでの集団を対象にした研修内容だけでは十分ではなくなってくるでしょう。
まずは、ワークプレイスラーニングを取り入れたブレンディッドラーニングを進めていくことが肝要です。
今後は、AIの発展に伴い、ブレンディッドラーニングでも、受講するひとりひとりの特性を勘案し、個別にデータに基づいた最適なカリキュラムや学習方法の提案をしていくことが可能になるでしょう。
従前からよく見られるブレンディッドラーニングはカリキュラムが広く浅くでした。今後は、個人が課題に感じているテーマ(例:プレゼンテーションの書き方」)に細分化し、受講者の性格に応じて、eラーニングがよいなどの学習方法提案をするなど、狭く深くなっていくでしょう。
ブレンディッドラーニングがこれまでよりも個々のレベルに合わせたものになっていく。そのためにも、AIのような新しいテクノロジーとの連携が不可欠です。
将来的に、人事部門は、成長戦略の実現に資する研修を選択するだけではなく、個々人に応じたカリキュラムを整備するために、従業員に関するデータ分析や解析などが職務として期待されるようになるかもしれません。今まで以上に、経営の一翼としての大切な役割を果たす部門として進化していくことになるでしょう。
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